きのか特許事務所の弁理士室伏です。このシリーズでは、「特許情報からどんなことが分かるか」をお伝えするために、特許情報の簡易分析事例をご紹介します。

第1回はゲーム業界の簡易分析事例を、第2回はニット業界の簡易分析事例をご紹介しました。

今回は、「他社がどんな開発体制になっているのか?どんな組織があって、最近はどこに注力しているの?」ということが特許情報から分かる、というお話をします。

1. 誰が開発したのかは公報を見ればすぐに分かる

公開公報や特許公報には、その発明を創作した者(発明者)が誰であるのかが掲載されます。下の図1は、青色発光ダイオードの有名な特許公報(特許第2628404号)です。発明者の中村修二さんのお名前が載っていますね。

図1:特許第2628404号

この発明者の情報は、誰でも見ることができます。複数人で発明した場合は、発明者として複数の人のお名前が載るわけです。

2. 発明者情報を分析すると開発の組織体制が見えてくる

連名で載っている場合は、お名前が載っている人たちは同じプロジェクトや同じ部署で開発をしていることが多いです。したがって各公報の発明者を見ていくと、「この人とこの人は出願時に同じ開発組織にいたんだな」という予想がつきます

公報を1つ1つ見ていくのは効率が悪いですから、複数の公報の発明者情報を集めて、各人の関係性を分析ツールを使って見ていきます。

例えば図2のような感じで、共起ネットワークを作ると、分かりやすいです。

図2 発明者同士の関係性を示す共起ネットワーク(2002年~2012年の出願を対象)

これはとある会社の2002年から2012年までの出願を対象とした、発明者同士の関係性を示す共起ネットワークです。PatentFieldで描画したものを加工しました。

Cさんを中心とするピンクの組織が一番大きく、この会社のメインの開発部隊であることが分かります。このグループの出願の特許分類や要約を見ると、このグループは技術αについて開発しているようです。

次いでAさん、Bさんを中心とするグレーの組織が大きいです。このグループは技術βについて開発しているようです。あとは小さい組織がたくさんありますね。

3. 時系列で追っていくと、開発体制の推移や注力分野の推移が見えてくる

時系列で見ていきましょう。図3では、左に2002年~2012年までの出願、右に2013年~2023年までの出願を対象とした発明者同士の関係性を示す共起ネットワークを並べました。

図3 発明者同士の関係性を示す共起ネットワークの推移(左:2002年~2012年の出願を対象、右:2013年~2023年の出願を対象) 

ここ10年で組織の数は少なくなり、すっきりしましたね。組織が大分変わったようです。

Aさん、Bさんを中心とするグループは、Fさん、Gさんのグループを取り込んで最も大きいグループとなっています(図4参照)。このグループの出願の特許分類や要約を見ていくと、応用分野に関する出願が多く見られました。つまり、この会社は近年技術βを軸として応用開発に最も注力しているようです。

図4

Cさんを中心とするグループは、Dさん、Eさんのグループを取り込んでいます(図5参照)。この会社は技術αを引き続き重視していることが分かります。

図5

また緑色のグループが新しく発足しています。緑色のグループは近年この会社が新しく始めた技術γを扱う組織です(図6参照)。技術α、βに加えて、技術γを第3の柱にしたいようです。

図6

4. まとめ

とある会社の発明者情報の簡易分析を行いました。

発明者同士の関係性を見ることで、「会社がどんな開発体制になっているのか」「どんな組織があるのか」「最近はどこに注力しているのか」を予想することができます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。