1.パリルートとPCTルートの費用の概要
前回の記事で、パリルートとPCTルートについてご説明しました。
それぞれのルートでどのような費用がかかるのでしょうか。ざっくりと表にまとめました。
パリルート | PCTルート | |
外国出願の費用 | ・翻訳費用 ・国内弁理士費用 ・現地代理人費用 ・現地庁費用 | (1)PCT出願時 ・庁費用 ・国内弁理士費用 (2)指定国に移行時 ・翻訳費用 ・国内弁理士費用 ・現地代理人費用 ・現地庁費用 (1)+(2)がかかります |
2.パリルートを利用した外国出願費用
パリルートを利用した外国出願に具体的にどれくらいの費用がかかるのでしょうか?項目ごとに見ていきましょう。なお、以下の数字はあくまでも目安であり、事務所、明細書のボリューム、および難易度によって変動します。
翻訳費用 | 国内弁理士費用 | 現地代理人費用 | 現地庁費用 |
30-40万円 | 15-25万円 | 現地代理人による | (米国で中小企業・個人事業主なら)$415-$830 |
複数の国に出願する場合は国ごとにかかりますが、国内弁理士費用は2か国目から安くなる場合が多いです。
現地代理人費用は、国や事務所によって千差万別です。米国や欧州の代理人費用は、国内弁理士費用より高額だということをご理解ください。
なお英語圏に複数出願する場合は、翻訳代は1回で済みます。
一般的に権利取得をしたい国の数が少ないと、パリルートのほうが安く済みます。
3.PCTルートを利用したPCT出願+指定国移行費用
PCTルートでは、まずPCT出願をして、優先日から原則30か月以内に指定国へ移行手続きをします。したがって(1)PCT出願時と(2)指定国へ移行時とで費用がかかります。
(1)PCT出願時
PCT出願時の費用は大体以下の通りです。こちらも事務所、明細書のボリューム、および難易度によって変動します。最新のPCT出願の庁費用はこちらをご覧ください。
庁費用 | 国内弁理士費用 | |
(中小企業・小規模企業なら)20-23万円 | 15~30万円 | |
国際出願促進交付金制度を利用 | (中小企業・小規模企業なら)10-15万円 | 15~30万円 |
(i) PCT出願時の国内弁理士費用
優先権主張を伴わず初めからPCT出願をする場合(いわゆるダイレクトPCT)、ここに明細書作成代がかかります。
(ii)PCT出願時の庁費用
庁費用の内訳は、国際出願手数料、送付手数料、および調査手数料です。上記費用は、送付手数料および調査手数料の「軽減制度」を適用させた場合の額となります(詳しくはこちら)。軽減制度を利用すると、送付手数料および調査手数料が、中小企業は1/2に、小規模企業は1/3に軽減されます。
(iii)中小企業・小規模企業なら、PCT出願時の庁費用はさらに負担が軽減される
「国際出願促進交付金制度」という制度があり、中小企業や小規模企業なら国際出願手数料の1/2~2/3が返ってきます!(現状は一端支払って後で交付される形になりますが、令和6年1月1日からは手続時に初めから減免される形となります(参考))
これによって結局、PCT出願時の庁費用の負担は、中小企業・小規模企業なら10~15万程度になります。
(2)指定国に移行時
翻訳費用 | 国内弁理士費用 | 現地代理人費用 | 現地庁費用 |
30-40万円 | 10-20万円 | 現地代理人による | (米国で中小企業や個人事業主なら)$455-$910 |
翻訳代はパリルートと同様です。
移行時の国内弁理士費用は、パリルートの出願時の国内弁理士費用よりも安い傾向にあります。こちらも複数の国に出願する場合は国ごとにかかる事務所が多いですが、2か国目から安くなる場合が多いです。
4.費用まとめ
PCT出願ですと、PCT出願時と指定国へ移行時との2つのタイミングで費用が発生し、1か国だけに出願したいという場合には割高になります。一般的に権利取得をしたい国の数が少ないと、パリルートのほうが安く済みます。一方、3~4カ国以上で権利取得したい場合、PCTルートの方が安価になる場合が多いと言われています。
しかしPCT出願であれば、移行する国の決定を先延ばしにできること(最大2.5年)、翻訳期間を長く確保できること、初期投資を抑えられること、移行前に調査結果を得てに補正できるためOAを減らして現地代理人費用を抑えることができること、といったメリットもあります。
パリルートかPCTルートか、各社の出願戦略に合わせて選択いただければと思います。
なお当事務所では、国内出願に加えて国際出願も取扱っております。海外展開をお考えの企業様は、お気軽にお問い合わせください(お問い合わせフォームはこちら)。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。