この記事のポイント
  • 商標は早い者勝ち
  • しかし先願主義を悪用した商標登録は、出願経緯が著しく不当なときには無効になる
  • そうはいっても原則通り自分の商標は早めに出願すべき

商標は早い者勝ち

商標法には、先願主義という考え方があります。つまり「商標は早い者勝ち」。同様の内容を出願した人が複数いた場合、先に出願がした人(先願)が登録を受けることができる、ということです。

他人に先に商標権をとられてしまうと、他人から「やめろ!」と言われる可能性があります。「自分が先に使っていた」や「昔から使っていた」は、通用しないことが多いです。

これについては、以下でも説明しています。

あなたの商標が悪意の他人によって出願されてしまったら、泣き寝入りするしかない?

では、あなたの商標が全く関係のない他人によって悪意で先に出願され、ライセンス料を要求された場合には、あなたは泣き寝入りするしかないのでしょうか?先願主義の悪用です。

いいえ、そうではありません。商標法には、不当な登録を取消または無効にする制度(異議申立制度、無効審判制度)が用意されています。

ちょうど今月、先願主義を悪用した商標登録は無効だという判決が出ました(「スマホ修理王」事件(令和4年(行ケ)第10034号))。以下では、この事件の概要を説明します。

「スマホ修理王」事件(令和4年(行ケ)第10034号)

は、「スマホ修理王」の商標権者です。
は、「スマホ修理王」を使用したスマホ端末の修理にかかるフランチャイズ事業を行っていました。

は、に対して商標権を侵害しているとの警告をした上で、商標の使用の中止を求めました。または、に対して本件商標を高額でライセンスさせる、そして買い取らせるような提案をしました。

実はは、とフランチャイズ契約を結んでいた元加盟者(元フランチャイジー)。この「スマホ修理王」という商標は、が使い始めたものでした。

なんとは、契約違反によりフランチャイズ契約が解消されたわずか4日後に、の商標「スマホ修理王」を出願していたのです。残念なことに、は出願をしていませんでした。

この経緯から、が、が商標登録をしていない事実をチャンスと思い、加害目的又は高額で商標を買い取らせる目的で出願したように見えます。まさに先願主義の悪用です。

結局裁判所は、先願主義を悪用したの商標登録出願が著しく社会相当性を欠くとして、公序良俗違反の無効審決を維持することとしました。

先願主義を悪用した商標登録は無効になる

この事件から、先願主義を悪用して他人の商標を出願した場合、その経緯が著しく不当なときには、無効になるということが分かります(商標法第4条第1項第7号)。審査で不当な経緯が判明した場合には、審査段階で拒絶されるでしょう。

そうはいっても、いち早く出願することが望ましい

そうはいっても自分の商標は、いち早く出願することが望ましいです。

なぜなら他人が先に出願してしまった場合には、その出願が審査により拒絶されるまで通常半年以上かかります。仮に登録されてしまった場合には、無効にするのにさらに時間も労力もかかります。また相手の悪意を観念できなければ、無効にすることは難しくなります。

あなたがトラブルの表面化を避けたいと思っていれば、拒絶や無効が確定するまで自分のビジネスを動かせない状態になってしまいます。ビジネスが破談することもあるかもしれません。

そのような事態を未然に防ぐために、やはり早めの出願をオススメします。

まとめ
  • 商標は早い者勝ち
  • しかし先願主義を悪用した商標登録は、出願経緯が著しく不当なときには無効になる
  • そうはいっても原則通り自分の商標は早めに出願すべき