1. 事業再構築補助金とは?

「事業再構築補助金」は、新型コロナウイルス感染症の影響で業績が落ち込んでしまった中小企業等を対象に、中小企業等の大胆な事業再構築を支援する補助金です。

令和5年3月17日現在において、9回の公募が実施されました。そして令和5年3月下旬頃から第10回の公募が開始予定です。

2. 第10回公募の注目ポイント:製造業が優遇される「成長枠」の新設

第10回の公募では、新たに成長枠が新設されます。「成長枠」は、これから新事業を展開する製造業が特に優遇されるものになっています。

どう優遇されているのか?それは、ずばり売上高減少要件を満たさなくていいということです。

実は、第9回公募までは、コロナ前と後の売上高を比較し、10%以上減少していること(売上高減少要件)が申請要件の1つとして設定されていました。したがってこの補助金の対象者の大半は、コロナにより売上が大幅に減少した事業者でした

しかし第10回公募から新設される「成長枠」では、売上高減少要件が撤廃されています。詳細は、中小企業庁が発表した「事業再構築補助金令和4年度第二次補正予算の概要」をご確認ください。

なお「成長枠」では、成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者が対象となっています。

では、成長枠の対象となる「成長分野」とはどのような分野でしょうか。

第一弾の成長枠の対象となる「成長分野」は、「成長枠の対象となる業種・業態の一覧」で公開されています。一覧によると、各種製造業やIT分野が成長枠の対象として指定されています。特に製造業の多さが目立ちます。(なんと成長枠の対象となる産業分類108分類中79分類が製造業です!)

したがって、既存事業とは異なる大胆な新事業を行うメーカが優遇されているといってよいでしょう。

3. 成長枠の必須要件

中小企業庁が発表した「事業再構築補助金令和4年度第二次補正予算の概要」によれば、成長枠の必須要件は、以下の通りとのことです。(※詳細は、第10回公募要領が公開された段階で、公募要領をご確認ください。)

成長枠の必須要件
  1. 事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む
  2. 補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均4.0%以上増加 又は 従業員一人当たり付加価値額の年率平均4.0%以上増加
  3. 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態(※「成長枠の対象となる業種・業態の一覧」で公開されている業種・業態)に属していること
  4. 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

4. 知的財産権の取得に要する弁理士費用も補助対象

補助対象となる経費には、知的財産権等関連経費として知的財産権の取得に要する弁理士の手続代行費用が含まれます(しかし庁費用は含まれません)。ぜひこの機会に、事業計画に特許出願や商標登録出願を盛り込むことをご検討ください。

なお権利化にかかる弁理士費用は出願時の出願手数料だけではありません。審査結果が通知されて拒絶理由対応をする際にも弁理士費用が発生します。したがって事業計画に盛り込む経費に、出願費用だけではなく、拒絶理由対応費用を含ませることをご検討ください。

通常、審査結果が出るまで多くの時間を要しますが(特許なら出願審査請求から約10か月、商標なら出願から約9か月)、早期審査等を利用することで早期に審査結果を得て、補助対象期間内に対応することが可能となります。

早期審査は申請要件がございますので、申請可否については以下の特許庁のHPを確認いただくか、ぜひ弁理士にご相談ください。

5. 補助率:1/3~1/2

気になる補助率ですが、第10回以降の補助率は、中小企業で 1/2中堅企業で1/3です。ちなみに第9回までは中小企業で2/3、中堅企業で1/2でしたので、対象者を広げた分、補助率は改悪されています。

6. 数ある補助金の中で事業再構築補助金を選ぶ最大メリット:事前着手申請制度がある

知的財産権等関連経費を補助対象する補助金は複数ありますが、事業再構築補助金を活用するメリットは「事前着手申請」が可能であるということです。

交付決定後に生じた経費のみが対象となる補助金が多い中、事業再構築補助金は交付決定前であっても事前着手の承認を受けた場合は、過去分(※)の経費であっても補助対象経費とすることができます。先願主義でいち早く出願することが求められる知財分野、特に新規性が必須の特許分野において、交付決定まで出願手続を先延ばしにするということはリスクが非常に高いです。その点、事前着手申請制度は、交付決定前の出願を可能としますので、知財的には有難い制度だと考えます。

※2022年 12 月 20日以降(令和4年度第二次補正予算で見直し)

7. まとめ

今回の成長枠の新設により、業績が堅調な企業であっても、事業再構築補助金を使って新事業を展開することが可能となりました。ぜひ新事業をご検討中の製造業のみなさまは、事業再構築補助金を活用してみてはいかがでしょうか?