前回の話はこちら↓
きのかちゃん
きのか特許事務所のマスコットキャラクター。知的財産権制度に詳しい、みかんの妖精。
甲田太郎
大手ゲーム会社を辞め、ゲーム開発会社「KODASH」を創業するべく準備中。
会社名を考案し、登記をしようと思ったところで、きのかちゃんに止められる。
そして、きのかちゃんから知的財産権制度について学んでいる。
早乙女うめ
梅ドリンクが名物のカフェ「Plumn」を経営している。
商標権侵害の警告を受けて慌てているときに、きのかちゃんと出会う。
そして、きのかちゃんから知的財産権制度について学んでいる。
おさらい:登録を受けることができない商標
登録を受けることができない商標は、以下の商標です。
(1)他人の登録商標と同じ、または似ているもの(第4条第1項第11号)
(2)識別力がないもの(第3条第1項各号)
その2:識別力がないもの
「識別力がないもの」は、登録を受けることができません(商標法第3条第1項各号)。なお、その商標が全国周知である場合は特別に登録を受けることができるものもありますが(同条第2項)、ほぼ認められないと思っておいた方がよいでしょう。
以下の商標は識別力がないとされています。
1.商品・サービスの普通名称
2.慣用商標
3.記述的商標(商品の産地、販売地、品質等の表示)
4.ありふれた氏又は名称
5.極めて簡単で、かつ、ありふれた標章
6.その他、識別力のないもの
1.商品・サービスの普通名称
商品・サービスの普通名称とは、一般的な名称、略称、俗称です。
商品「スマートフォン」の取引のときに商標「スマホ」を使っても、取引者はどこの業者のスマートフォンかが分かりません。このように普通名称はそれだけでは識別力がないことが明らかなので、登録を受けることができません。
(例)
商品「サニーレタス」について、商標「サニーレタス」
商品「スマートフォン」について、商標「スマホ」
商品「塩」について、商標「波の花」
このような商標であっても、特殊なレタリングにより識別力ありとなる場合があります。
2. 慣用商標
慣用商標とは、同種類の商品・サービスに関して同業者間において普通に使用された結果、識別力が失った商標をいいます。
(例)
商品「清酒」について、商標「正宗」
役務「婚礼の執行」について、商標「赤色及び白色の組合せの色彩」
役務「屋台における中華そばの提供」について、商標「夜鳴きそばのチャルメラの音」
3.記述的商標(商品の産地、販売地、品質等の表示)
商品の産地、販売地又はサービスの提供の場所等を表示するものは、識別力がありません。このような商標は、取引過程に置く場合に必要な表示であり、誰かが独占するとたくさんの人が困ってしまうため、それだけでは登録を受けることができません。
商品の形状、商品が通常有する色彩、商品が通常発する音、役務の提供にあたり通常発する音も、記述的商標にあたります。
(例)
商品「みかん」について、商標「和歌山みかん」 ←商品の「産地」
商品「書籍」について、商標「商標法」 ←商品の「品質」
役務「焼き肉の提供」について、「『ジュー』という肉が焼ける音」 ←役務の提供にあたり通常発する音
このような商標であっても、特殊なレタリングにより識別力ありとなる場合があります。
4.ありふれた氏又は名称
ありふれた苗字(例:山田、田中)、著名な地理的名称(例:東京、フランス)、業種名(例:工業、製薬)は、識別力がありません。これらに「商店」、「商会」、「株式会社」、「有限会社」などを組み合わせても、識別力がありません。
(例)
商標「山田商店」
商標「東京株式会社」
商標「新宿工業株式会社」 (←これだけは他に同一のものが現存しなければ登録を受けることができる)
このような商標であっても、特殊なレタリングにより識別力ありとなる場合があります。
5.極めて簡単でありふれた標章
単なる直線や円などの簡単な図形や、短すぎる名前は、識別力がありません。
(例)
商標「AB」
商標「A-B」
商標「あ」
商標「AB2」
商標「△」
6.その他、識別力がないもの
その他、識別力がないと考えられる商標は登録を受けることができません。
(例)
地模様(例えば、模様的なものの連続反復)のみからなるもの
商標「習う楽しさ教える喜び」 ←標語(キャッチフレーズ)
商標「令和」 ←現元号
指定役務「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」について、商標「さくら」 ←店名としてよくある
つづく…