はじめに

このページでは、商標法の基礎知識について簡単にご説明します。

商標とは?

商標とは、自己の商品やサービスに使用するマークのことです。
 マークの例:会社名(商号)、店舗名、ロゴマーク、商品名、サービス名

商標には、3つの機能があります。
(1)自他識別機能:自己の商品・サービスと、他人の商品・サービスとを区別する機能
(2)出所表示機能:その商品・サービスが一定の出所から提供されていることを示す機能
(3)品質保証機能:同じマークがついている商品・サービスであれば、品質は同じであると保証する機能

商標登録制度とは?

商標登録制度は、ビジネスを行う者の商標を保護する制度です。

特許庁に対して出願して、特許庁から商標権が付与されると、その商標を独占して使用できます。つまり紛らわしいマークがついたニセモノ商品を排除することができます。また似たような商標を他人に横取りされることを防ぐことができます。

独占できる期間は登録から10年ですが、登録料を支払えば何回でも更新することができます。

商標登録制度の留意点

1. 商標権=「マーク」×「商品・サービス」

出願時には、「マーク」のほかに、自社で使用する「商品・サービス」を指定して出願します。つまり、商標権は、あくまで指定した「商品・サービス」の範囲内で、「マーク」を独占して使用できる権利です。

たとえば商品「スマートフォン」について「APPLE」というマークの商標権をとったとしても、商品「チョコレート」に「APPLE」というマークをつけて販売する他人に対して、文句を言うことができません。

また他人が商品「チョコレート」に「APPLE」というマークの商標権をとってしまう可能性があります。

2. 商標は早い者勝ち

商標は「早い者勝ち」です(先願主義)。同様の商標に関する商標権を他人にとられてしまうと、自社でその商標を使用*できなくなります。
店舗名が使用できなくなった場合は、看板やチラシを作り直したり、広告を出し直したりすることになります。店舗名が変わってインターネットでヒットしなくなっては、せっかくの努力が水の泡となります。
なお、「昔から使っていたから大丈夫」は基本的に通用しません

3. 識別力がない商標は登録を受けられない

商標は、自分の商品と他人の商品とを区別する目印です。区別できるくらいの識別力が必要です。

以下のような商標は、識別力がなく、基本的に登録を受けることができないとされています。
(1)普通名称のみ
 (ex.) 商品「サニーレタス」について、商標「サニーレタス」
   商品「スマートフォン」について、商標「スマホ」
(2)慣用商標のみ
 (ex.) 商品「清酒」について、商標「正宗」
   役務「宿泊施設の提供」について、商標「観光ホテル」
(3)記述的商標(=商品の品質や産地そのまま)

 (ex.) 商品「書籍」について、商標「商標法」
    商品「りんご」について商標「青森りんご」
(4)ありふれた氏又は名称(+商会、株式会社、有限会社)
 (ex.) 商標「田中商店」
    商標「東京屋」
(5)極めて簡単で、かつ、ありふれた標章
 (ex.) 商標「A2」
    商標「AB2」
(6)そのほか識別力がないもの
 店名として多数使用されていることが明らかなもの
 (ex.) 指定役務「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」について、商標「さくら」

4. 他人の登録商標と類似する商標登録を受けられない

前項で説明した通り、商標の世界なので、他人の登録商標と同じ「マーク」×同じ「商品・サービス」の組み合わせは、当然登録を受けられません。他人の登録商標と類似の「マーク」×類似の「商品・サービス」の組み合わせも、登録を受けられません同じ「マーク」×類似の「商品・サービス」の組み合わせや、類似の「マーク」×同じ「商品・サービス」の組み合わせも同様です。

出願から登録までの流れ

商標登録出願から設定登録までの一般的な手続の流れは、以下のようになります。

1. 出願

特許庁に対して出願書類を提出します。

出願までの流れについては、こちらをご覧ください。

2. 審査

出願の内容は公開され、特許庁の審査官による審査が開始します。

3. 拒絶理由通知への対応

審査官が登録を認めることができないと判断した場合、認めることができない理由(拒絶理由)が通知されます。出願から最初の結果が出るまで、平均9か月と言われています(2022年度)。この期間は、早期審査制度を利用すると平均2.1か月に短縮します(2021年度)。

拒絶理由に対して、拒絶理由を解消するために意見書・補正書を提出します。 なお拒絶理由通知を受けずに一発で登録査定になることもあります。

4. 査定

登録査定

拒絶理由が解消し、審査官が登録を認めることができると判断した場合、登録査定になります。特許庁から登録の査定謄本というものが送達されます。この時点では、まだ商標権は発生していません。

拒絶査定

拒絶理由が解消せず、審査官が依然として登録を認めることができないと判断した場合、拒絶査定になります。特許庁から拒絶査定謄本というものが送達されます。拒絶査定に対して承服できない場合は、送達日から3か月以内に拒絶査定不服審判を請求して、再度権利化を試みることができます。

5. 登録料納付
(設定登録)

登録査定(謄本送達)から30日以内に、登録料を納付します。納付すると、設定登録され、商標権が発生します。